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多国籍企業の終わり

FTの敏腕記者であるアンドリュー・ヒルが面白い記事を書いている。

“Business is going native again”,FT,April 9,2014

 

・多国籍企業は、いわゆるハブ・アンド・フォークシステムを取っている。すなわち、世界各国に支社を構え、そこでは生産、販売、管理に到る様々な活動を行い、それらを本社が統括するシステムになっている。ヒルはこれが急速に時代遅れになりつつあると論じている。彼はIBMの前社長であるパルミサノ氏の著作(Re-think)から、これにヒントを得てこの記事を書いている。

 

・パルミサノ氏によれば、これから世界をリードするのは、多国籍企業では無く、世界統合企業(Globally Integretede Enterprises,GIE)であるという。GIEは、支社経由で無く、世界中の顧客に直接対峙し、彼らに対してそれぞれの国情や文化に合った商品を迅速かつ安価に提供する仕組みであるという。それが可能になった背景は、クラウド化によって世界的なサプライ・チェーンの構築と、世界の顧客にリアルタイムに対応できる顧客サービスの実現がある。

 

GIEが多国籍企業と異なるのは、どの点だろうか。多国籍企業は,(もしくは地域毎に)支社を構え、そこでは生産から販売に到るさまざまな活動が実行される。つまり他国製企業は、各国に置かれたミニ企業の集まりとそれを統治する本社とから成り立っている。これにたいし、GIEは支社という概念を捨てている。つまり本社が調達、生産、販売の全てを直接扱うのだ。

 

GIEを目指す企業として、パルミサノ氏は、IBMを上げている。またセメックス(メキシコの世界最大級のセメント製造会社)やインドの通信企業バーティ・エアテル社もその例であるという。しかも既存の大企業がGIE化するのでは無く、ごく小さな地方企業がイノベーションを利用して、一挙にGIEとして登場する可能性も示唆している。つまり世界を相手に商品を売る既存の大企業にとって、潜在的な脅威が高まっているわけだ。

 

・日本の場合、典型的な多国籍企業と言えば商社や自動車メーカーなどが頭に浮かぶ。しかしアマゾンの例を考えれば、たしかに企業形態は急速に変わりつつある感じがする。アマゾンの本社が何処にあるかは、だれも気にしない。またアマゾンの日本支社といってもだれもその場所は知らないだろう。別にアマゾン・ビルが銀座にあるわけでも無い。アマゾンのお店も見当たらない。それでも、われわれは、日々そのサービス(地上最大の小売業!)を享受している。

 

・ソニーやパナソニックのような日本的国際企業の凋落が言われ始めてからすでに10年以上が経つ。もしかしたら日本はこうしたGIEの波に乗り遅れつつあるのかもしれない。