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世界人口の今後と日本の将来

世界人口の今後と日本の将来

 2020.08.01

・われわれがエネルギーモデルなどで長期予測を行うときには、国連の人口推計(

World Population Prospect)を前提として利用する。その最新予測によると(2019年7月)、世界人口は2050年に97億人に達し、2100年頃には110億人で頭打ちになるという。現在の世界人口が77億人程度だから、今後1.4倍程度にふくれあがることになる。

 

・最近になって、これに代わる試算結果がワシントン大学の研究者によってランセット誌に発表された。

 

・この予測が国連のものと違うのは、出生率を教育程度と避妊効果の関数として構造化したことだ。彼らの主張に従えば、教育や避妊効果の浸透によって人口増加は抑えられることになる。国連推計は、合成特殊出生率(TFR、total fertility rate)の想定に問題があるという。そこでは、TFRが人口代替率(総人口の維持に必要な出生率,replacement rate,2.1)以下の国では、それが1.75まで戻ることが想定されている。これにたいしワシントン大学の予測では、教育水準が向上し、避妊知識が普及するにつれてTFRは低下するものとされている(世界のTFRは2100年に1.66と推定)。

 

・計算結果はやや衝撃的である。世界人口のピークは2064年に97.3億人に達し、その後は緩やかに減少を続け2100年には87.9億人となる。これは国連推定値の約8割の水準である。これによって地球のキャパシティに若干の余裕が生まれる(この研究はSDGがらみで行われている)。

 

・国別にみると、2100年時点の人口大国は、インド10.9億人(2017年実績:13.8億人)、ナイジェリア7.9億人(同:2.1億人)、中国7.3億人(同:14.1億人)、アメリカ3.4億人(同:3.2億人)、パキスタン2.5億人(同:2.1億人)などとなる。アメリカが余り減らないのは、移民のためである。また2100年の中国人口が現在の約半分になるのは衝撃的だ。ちなみに中国の人口ピークは2024年で14.3億人とされている。

 

・日本の人口は2100年に5,900万人と推定されている。国連推計の2100年値が7,500万人だからその値を大きく下回っている。日本の人口ピークは2017年の1.28億人ですでに過去のものとなっている。

 

・日本は現在本格的な人口減社会に突入しつつある。通常それはマイナスイメージでとらえられる。しかし第二次大戦前には、日本の大きな課題は、乏しい国内資源でどうやって増大する人口を養うかだった。その結果がアジアへの軍事的進出につながったことは記憶に新しい。こうしてみると、人口減と個人の豊かさをどのように両立させていくかに関して、むしろプラスの見方に立つことが必要だろう。

 

・たとえば人口減による限界集落の問題が論じられるが、これはシカゴ大学のラジャンが説くように、コミュニティの崩壊現象とみた方が良さそうだ。

 

(参考)

・Walter Russell Mead,「気候変動問題、活動家には不都合な予測」

   "Snooze the Climate Alarms",WSJ,July 29,2020

・Stein Emil Vollset etal."Fertility,mortality,and population scenarios for 195 countries and territories from 2017 to 2100:forecasting analysis for the Global Burden of Disease Study",July,14,2020:https://doi.org/10.1016/s0140-6736(20)30677-2

・国連、世界人口推計2019年版データブックレット,World Population Prospects,2019

 2019年7月2日